「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」白石一文

読了。昨日図書館から借りてきたのだけれど,外出している間も電車の中や喫茶店でずっと読み続けていた。最近は熱心に小説を読むことが少なくなって,時間が経つのを忘れて没頭することなどほとんど無かったんだけど,久しぶりにそんな体験をした。
先週見た園子温監督の『愛のむきだし』と共通する印象を受けた。猥雑で悪趣味だけれど崇高で深遠というか。デビュー以来,小説ごとに書き分けられてきたテーマがこの一冊に総合されていてとても読み応えがありました。とはいえ,主人公の思索の内容というよりはむしろ,そういった問いを発せざるをえない切迫感の方に共感を覚えたのだけれども。不条理に満ちた世界を条理で覆うことはできないとして,そのことに人は耐えられるだろうか。