ケン・グリムウッド『リプレイ』

リプレイ (新潮文庫)

リプレイ (新潮文庫)

タイトルの通り、タイムスリップを繰り返して何度も人生をやり直す(=リプレイ)ことになる男の話。
設定としてはそれこそ手垢が付いたテーマ。初めはパターンを踏襲するかのように物語が進み、読者としてもある程度先が読めるのだけれど、リプレイを繰り返すたびに複雑になっていく主人公の心理にどんどんと引き込まれ、結局最後まで一気に読んでしまった。
こういったお話はプロットの微妙なさじ加減ひとつでいくらでも陳腐になってしまう気がするんだけれど、その辺が絶妙だった。自分の人生経験や心理の機微に対する洞察によほど信頼が無いと、こういう小説って書けないのだと思う。