佐々木克『大久保利通』

大久保利通 (講談社学術文庫)

大久保利通 (講談社学術文庫)

生前の大久保利通をよく知る人たちの話をまとめた本。元々は明治時代の終わりごろに報知新聞に連載されたもので、部数限定で書籍化されたことはあったらしいけれど、その完全版。

でも残念ながら、読んでいて目から鱗が落ちるという感じはあまりしなかった。新聞連載ということで、生き生きとした本音や逸話というよりも、形式的な誉め言葉や建前の部分が多くて、生臭い凄みのようなものはなかなか伝わってこない。だから、大久保利通についての理解が深まるというよりも、むしろ(大久保について語る)明治人の佇まいや意識の方に目が行ってしまう。それに、同時代に生き、本人と近しい生活を送った人間よりも、専門家の研究成果を読むことが出来る後世の人間の方が広い視野を持っている場面も多く、その意味でもちょっと視野の狭い内容のような気がする。