あなおそろしや

*申し訳ありませんが
http://d.hatena.ne.jp/scotty/20060217/1140148511
も併読してください(2月17日)。






http://iiyu.asablo.jp/blog/2006/02/16/255603


たまたま手元にスティグリッツ第二版(ちなみに第4刷)があったもので。
どちらもミスであることは間違いないし、それを修正しないのは出版社の怠慢だけど、全然本質的な話じゃないですよ。
一つ目に関しては単純に「率」をとるか、「従量税率→従量税額」とでも直せば十分話が通じます。そのすぐ後で「t」は税「額」だといっているわけだし、全く本質的な指摘ではない。
中村さんの論法だと、「それなりにインテリのイギリス人の書いた文章にスペルミスがあった」としたら、「この世に存在しない単語を使って表現が成り立っているなんて全く英語という言語はけしからん。いんちき言語だ」とだって言えてしまうことになる。「スペル間違えてますよね。ちゃんと直してくださいね」で済む話なのでは無いだろうか。

後半は確かにご指摘の通りだけれど、これも文脈から判断すれば単純な誤植であることはすぐ気づける。その前の文章で生産者と消費者に分けて税負担を論じているわけで、件の台形の面積は「消費者分の余剰損失を足し忘れている」だけだってことくらいぼくでも気付けた。こっちもそんなに目くじら立てる必要は全くないと思う。


何時までたっても誤植が修正されていないのは確かに問題だけど、それは経済学がインチキだとか、経済を学ぶ人間がすべからくバカで一人としてこのミスに気づかなかったということではないと思う。上述の通り文脈から判断すれば、(ぼくですら)すぐに誤植と気付けるわけで、少なくない数の読者は当然気づいていただろうし、さらにその一部の人たちは丁寧に出版社なり著者なりに指摘もしたのではないだろうか。経済学の教科書で誤植が放置されているのはこの教科書に限ったケースではないわけで*1、要するに出版社にやる気が無い(か無能な)んじゃないんだろうか。そして、日本の出版社にやる気が無い(か無能)として、それと経済学の有効性を一緒くたにしてしまうのはどう考えても暴論だと思う。


さらに「訳者はしがき」を読む限りではこの部分を書いたのは藪下さんとは言えないのでは。はっきりとは書いていないけど、素直に読めば5章の訳を担当した清野さんという人が書いたようにも思えます。

*1:うろ覚えだけど、出版から十年くらいに買った旧版の伊藤元重さんのミクロで誤植を見つけた記憶がある。